苫米地式コーチング認定コーチの萩原崇です。
鬼滅の刃の人気が衰えることを知りません。
2020年7月3日発売のコミックス第21巻ではシリーズ累計発行部数8,000万部を突破しました。完結までの22巻、23巻はそれぞれ10月2日、12月4日に発売予定です。累計発行部数で1億部を越えると、『ジョジョの奇妙な冒険』や『金田一少年の事件簿』、『進撃の巨人』と並びます。
2019年11月28日に発表された「オリコン年間コミックランキング2019」の作品別ランキングでは1,205.8万部を記録し、『ONE PIECE』『キングダム』を抑えて第1位となりました。
『鬼滅の刃』の主人公、竈門炭治郎(かまどたんじろう)は心優しい少年で自分を鼓舞するのがとても上手です。そのセルフコーチングを見ていきましょう。
鬼滅の刃とは
ストーリー
山中の炭焼き小屋で6人兄弟の長男として暮らしていた竈門炭治郎。ある冬の日、炭治郎は炭を売りに麓の村に降りて、翌朝家に戻ると、鬼の始祖である鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)により家族を惨殺され、唯一生き残った妹・禰豆子(ねずこ)を鬼へと変えられていた。炭治郎は鬼を退治する組織「鬼殺隊」に入り、禰豆子を人間に戻し、無惨を討つ旅に出る。
作者
『鬼滅の刃』の作者は吾峠 呼世晴(ごとうげ こよはる)さんで、『鬼滅の刃』が初連載作品となります。福岡県出身の女性漫画家で連載開始と同時に上京したそうです。
コミック1巻収録の「大正コソコソ噂話」では、吾峠先生は作品タイトルを「鬼滅の刃」の他にも9つのタイトルを考えていたことを明かしています。
- 鬼滅奇譚
- 鬼鬼滅滅
- 悪鬼滅々
- 鬼殺の刃
- 滅々奇譚
- 鬼殺譚
- 空想鬼滅奇譚
- 鬼狩りカグツチ
- 炭のカグツチ
炭治郎のセルフコーチング
それでは水の呼吸の使い手、炭治郎のセルフコーチングを観ていきましょう。
2019年4月から9月までTOKYO MX等で放映されたアニメ版(コミックス1巻~7巻相当)からピックアップしました。
育手・鱗滝左近次の最終選別に行くためのテスト
「鬼殺隊」に入隊するため、炭治郎は育手の鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)のもとで厳しい修行をします。
鬼殺隊の隊士は、各地の育手から基礎訓練を受けて、刀で鬼と戦う術を身につけていきます。炭治郎の場合は、鱗滝左近次が水の呼吸の使い手(元柱)だったため、水の呼吸を習得します。
正式な隊士になるには、藤襲山(ふじかさねやま)で行われる”最終選別”を突破する必要があります。そうすることで、正式に隊士と認められて、鬼を倒せる刀「日輪刀」が与えられます。
藤襲山の”最終選別”は実際に鬼と戦うので命がけです。鱗滝左近次の弟子たちも”最終選別”を突破できずに何人も命を落としています。炭治郎を”最終選別”に行かせたくない思いもあります。
「この岩を斬れたら”最終選別”に行くのを許可する」
炭治郎に課された課題は、直径2メートルに及ぶ岩を叩き斬ることでした。
後のストーリーで判明しますが、炭治郎が挑戦することになった岩は、過去の鱗滝左近次の弟子たちの誰よりも大きい岩でした。そう簡単に斬ることはできず、炭治郎はこれまで鱗滝左近次から教わった訓練を反復して繰り返して鍛錬を続けます。
ただ半年たっても岩は斬れなかった
俺は焦る
足りない
まだ鍛錬が足りないんだ
もっとやらないと もっと
俺 だめなのかな?
禰豆子はあのまま死ぬのか?
わーーーーーっ
挫けそう!!負けそう!頑張れ俺!!頑張れ!!!
ネガティブなセルフトークで心が一杯になりそうなとき、炭治郎はそれをかき消して自分を鼓舞します。
物語では、そのとき兄弟子の錆兎(さびと)と真菰(まこも)が現れて稽古をつけてくれますーーーーー
元・十二鬼月の響凱(きょうがい)との戦い
「十二鬼月」(じゅうにきづき)は、鬼舞辻無惨直属の精鋭12体の鬼です。
その階級は大きく「上弦」「下弦」に分かれて、それぞれに壱(いち)から陸(ろく)の番号が振り当てられています。上弦の壱が最も強く、下弦の陸が十二鬼月のなかで最も弱くなります。
元・十二鬼月の響凱(きょうがい)は、下弦の陸でした。
炭治郎は、浅草で鬼舞辻無惨の放った追手の鬼、手毬鬼・朱紗丸(すさまる)と矢印鬼・矢琶羽(やはば)に襲われます。
珠世(たまよ)と愈史郎(ゆしろう)と共闘して鬼を倒すものの、肋骨と脚を骨折する怪我をして満身創痍の状態で旅を続けます。
道中、通りがかった屋敷で鬼に襲われている子どもたちを助けるために、元・十二鬼月の響凱と対峙することになります。
響凱の激しい攻撃を避けて防戦一方の炭治郎。なかなか刀の届く間合いまで距離を詰めることができずにいます。
炭治郎の脳裏には、”響凱の懐に飛び込んだときに、肋骨の痛みで足がもつれたら…攻撃を受けて輪切りになってしまう…”と悪いイメージが頭をよぎります。
今の俺は骨だけでなく心も折れている
真っ直ぐに前を向け!!
己を鼓舞しろ!!
頑張れ炭治郎頑張れ!!
俺は今までよくやってきた!!
俺はできる奴だ!!
そして今日も!!
これからも!!
折れていても!!俺が挫けることは絶対に無い!!
炭治郎は戦いの中であっても、ネガティブなイメージが浮かぶと、すぐさまにそれを否定して、ポジティブなセルフイメージに置き換えています。
蝶屋敷での機能回復訓練を終えて
那田蜘蛛山で十二鬼月の下弦の伍・累と戦闘になった炭治郎は、習得したばかりの水の呼吸の剣技では歯が立たず苦戦します。ピンチに陥ったときに、父から伝承した「ヒノカミ神楽」と禰豆子の血鬼術で逆襲に転じますが、あと一歩のところで累に間一髪で回避され、絶体絶命に。そのとき、水柱・冨岡義勇(とみおかぎゆう)が到着し、冨岡義勇の独自技である水の呼吸 拾壱ノ型 凪(なぎ)で倒します。
下弦の伍・累との戦いで重傷を負った炭治郎は、蟲柱・胡蝶しのぶ(こちょうしのぶ)が所有する「蝶屋敷」で治療を受けます。
蝶屋敷には炭治郎の同期で花の呼吸の使い手、栗花落カナヲ(つゆりかなを)がいました。カナヲは、胡蝶しのぶから「継子」に認められて英才教育を受けていたので、機能回復訓練では相手をしてくれたカナヲに炭治郎は全く敵わず実力差を見せつけられます。
上達のコツは「全集中・常中」だということを知り、炭治郎は特訓をしてついに会得します。機能回復訓練でもカナヲを相手に勝てるようになりました。
機能回復訓練も終えて全快した炭治郎は、次の任務に向けて蝶屋敷を後にします。同期のカナヲとも別々になるので挨拶に行くと、炭治郎はカナヲの反応が気に留まりました。
カナヲは、「どうでもいいから何も決められない」という一種の虚無感を抱えていて、指示を受けたこと以外の行動はコイントスの結果で決めていました。そこで炭治郎はひとつの提案をします。
「よし!
投げて決めよう」「何を?」
「カナヲがこれから
自分の心の声をよく聞くこと」
炭治郎は、コイントスで”自分の心の声に耳を傾ける”かどうか決めよう、と提案します。
「表!!
表にしよう表が出たら
カナヲは心のままに生きる」
「とれた とれた カナヲ!!」
「表だーーーーっ!!
カナヲ
頑張れ!!
人は心が原動力だから
心はどこまでも強くなれる」
心の持ちようで今までの困難をいくつも乗り越えてきた炭治郎は、心が持つ力を実感していたのでしょう。
炭治郎のゴール設定
炭治郎はセルフコーチングをうまく活用して、自分のセルフトークをコントールしていました。ネガティブなセルフトークが出たときに、(それは自分らしくない、と)それを否定して、ポジティブなセルフトークで置き換えています。
では炭治郎の根幹となるゴールイメージはどんなものなのでしょうか。
強烈なゴールイメージ
炭治郎のゴールは「妹の禰豆子を人間に戻すこと」です。
禰豆子を鬼にした鬼舞辻無惨から人間に戻す方法を聞き出す。そのために、まずは鬼と戦っている「鬼殺隊」に入隊しよう。
このゴールイメージを強烈に持っているので、炭治郎はどんな困難にも立ち向かっていけます。
表向きは、禰豆子を人間に戻すことが炭治郎のゴールですが、鬼殺隊に入隊して任務をこなしている中で、心の優しい炭治郎はより抽象度の高いゴールに更新しているように思います。
それは、「鬼のいない平和な世の中にすること」です。そのために禰豆子を危険に晒す判断も強いられます。
対局にいる善逸
我妻善逸(あがつまぜんいつ)も炭治郎の同期で、雷の呼吸の使い手です。善逸は弱虫キャラとして描かれていて、とにかく弱音(ネガティブなセルフトーク)を吐きます。
ゴール設定をしていない善逸は、道中で炭治郎に会ったときも弱気です。
「俺はもうすぐ死ぬ!!
次の仕事でだ!!
俺はもの凄く弱いんだぜ
舐めるなよ」
「毎日毎日地獄の鍛錬だよ
死んだ方がマシだってくらいの最終選別で死ねると思ったのにさ!!
運良く生き残るから
いまだに地獄の日々だぜあーーーー
怖い怖い
怖い怖い」
ゴール設定をしている炭治郎と、ゴール設定していない善逸では、共に鬼殺隊としての心構えは持っているものの、発言や立ち回りが本当に対照的です。
そんな善逸も、物語の後半では、炭治郎と同じように強烈なゴールイメージを持つようになります。
まとめ
鬼滅の刃の主人公・竈門炭治郎のセルフコーチングを見てきました。
セルフトークをコントロールして、ネガティブなセルフトークをしていたらポジティブなセルフトークに置き換えて、ゴールに向かって困難を乗り越えていきます。
余談ですが、炭治郎たち鬼滅隊が日輪刀で使う呼吸技は、水の呼吸であれば流れる水、ヒノカミ神楽であれば燃える火を刀に纏っています。あれは水や火を出しているのではなく、見ている人がそう感じる、そう見えるというものだそうです。呼吸法の習熟度の低い剣士では薄くて見えないそうです。
まさに臨場感高く技を放つ剣士ほどはっきり視覚化されるということですね。