コーチが守秘義務契約(NDA)を何より大切にしている理由

苫米地式コーチング認定コーチの萩原崇です。

私は上場企業のIR担当をしていたこともあるので、そのときはインサイダー情報を取り扱っていました。
未公開の情報で開示までの取り扱いにとても神経を使ったのを覚えています。

コーチングセッションで見聞きする内容については、クライアントと必ず守秘義務契約を結びます。

守秘義務契約とは

守秘義務契約とは、秘密保持契約と言われることもあります。文字通り、相手から明かされた情報について秘密にします、というものです。

一般的な守秘義務契約では、秘密にする内容秘密にする期間、などを定めます。

職業上の守秘義務を負う人

職業によっては、その職務の特性上、それぞれ法律により守秘義務を課されることがあります。正当な理由がなく、職務上知り得た秘密の内容を漏らした場合、各法令で処罰の対象となります。

守秘義務を負う職業の一部を紹介します。

公務員

公務員は公的な職務のために重大な個人情報を取り扱います。国家公務員法第100条で「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と規定されているとおり、国家公務員には守秘義務が課せられています。

また地方公務員にも同様に守秘義務が課せられています。

医師

医師は患者の健康状態や病歴、診断名などの個人情報を扱うため守秘義務を負っており、違反した場合は刑法第134条の「~正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」により罰せられます。

医師の他、歯科医師や薬剤師などの医療従事者も同様に守秘義務が課せられています。

弁護士

弁護士は職業上依頼人のプライベートな情報を入手する機会が頻繁に発生するので、守秘義務が課せられており、弁護士法第23条の「弁護士又は弁護士であった者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」という条文によって定められています。

自衛隊員

自衛隊員は、任務上の秘密扱いになる情報を取り扱うことがあります。自衛隊員の守秘義務については、自衛隊法第59条の中で「隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を離れた後も、同様とする。」と明文化されています。

税理士

税理士の守秘義務は税理士法第38条で定められています。「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなった後においても、また同様とする。」

郵便局員

郵便局の職員も法律によって守秘義務を負っています。郵便法第8条には「郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする」とあります。

探偵

探偵も依頼を通じて知り得た情報について守秘義務を負っています。探偵業の業務の適正化に関する法律第10条で「探偵業者の業務に従事する者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。探偵業者の業務に従事する者でなくなった後においても、同様とする。」とあります。

コーチングにおける守秘義務契約

国際コーチング連盟(ICF)が定める「倫理規定」をご紹介します。
ICFの定める倫理規定は、5つのパートから構成されています。

  1. 前書き
  2. 主要な定義
  3. ICFのコア・バリューと倫理原則
  4. 倫理基準
  5. 誓約

④の倫理基準の中で守秘義務について書かれています。

ICFプロフェッショナルとして、私は、

1. 初回または事前に、コーチングのクライアントとスポンサーに対し、コーチングとは何であり得られうる価値は何か、守秘義務とは何で何が制限されるか、金銭的な取り決めやコーチング契約のその他の条件について説明し、その理解を確実にします。

2. サービスを開始する前に、クライアントとスポンサーを含むすべての関係者の役割、責任、権利に関する合意/契約を作成します。

3. 合意されたとおりに、すべての関係者との間で最も厳しいレベルの守秘義務を維持します。 私は、個人データおよび通信に関連するすべてに適用される法律を認識し、それらに従うことに同意します。

https://icfjapan.com/icf-code-of-ethics

コーチが守秘義務契約を大切にしている理由

コーチングセッションを始める前に必ずコーチはクライアントとの守秘義務契約を結びます。

それは、クライアントに関する一切の情報を誰にも話さないということの約束です。
セッションの中でどんなことを聞いたか、はもちろん、誰がクライアントであるか、といったことも含みます。

何を話しても情報が漏れない空間だからこそ、クライアントは安心してコーチングを受けることができます。
そういった守秘義務を負っているからこそ、クライアントは親兄弟にも相談できないことをコーチに話せるようになるんだと思います。