コーチングから見る新年の抱負の落とし穴

苫米地式コーチング認定コーポレートコーチの萩原崇です。

11月ハロウィンが終わると町中にはクリスマスツリーが飾られて、年末の装いが始まりますね。こういったところからも季節の変わり目を感じます。

ところでハロウィンがイベントとして市民権を得たのは、ここ最近になってではないでしょうか。2月の恵方巻きを食べる習慣もいつの間にか、コンビニエンスストアを中心に広まりましたね。

さて、そのハロウィンと恵方巻きの間にある年末年始で「新年の抱負」を立てることが昔からあります。今年一年を棚卸しして振り返って、来年成し遂げたいことを手帳に書く。これ、コーチング理論からすると、やり方が大きく誤っているんです…。

初詣とは

「新年の抱負」の話題を始める前に、まずは新年の抱負とセットになるであろう、「初詣」について触れていきたいと思います。日本の初詣の起源を辿っていくと、とても興味深いことがわかりました。

日本の初詣の歴史

江戸の正月といえば、正月元日から月末まで初縁日(初卯、初巳、初水天宮、初大師、初不動など)に基づく参拝が行われていて、初詣(元日詣)は恵方詣が一般的でした。つまり、年ごとに異なる恵方に当たる神社仏閣に参拝することで歳徳神の御利益が授けられることを願っていました。

それが現代のように恵方や初縁日に関係なく「初詣(年が明けてから初めて神社や寺院などに参拝する伝統行事)」となったのは、鉄道の発達のためで100年あまりの歴史しかありません。

鉄道会社(国鉄と私鉄)の誘致PR合戦によって定着していったもので、そのため、初詣客数ランキングの上位が1位:明治神宮、2位:成田山新勝寺、3位:川崎大師、と複数の鉄道路線がアクセスする社寺であることからもわかります。(出典:『鉄道が変えた社寺参詣』)

 

コーチングから見る初詣

初詣は、国鉄(今のJR)と私鉄が広めたイベントだったんですね。

イベントごとだからこそ、初詣で真剣にお願い事をするのはお勧めしません。もしも本当に神頼みしたいのであれば、せめて「恵方詣」など由緒正しい方法で参拝しましょう。

ところで冷静になって見つめ直してもらいたいのですが、初詣に行った社寺に神様が宿っていたとして、10円玉、50円玉、100円でも、ちょっとした小銭の賽銭で願いを叶えてくれるのでしょうか。そんな奇特な神様がいる神社があるなら、私だったら元日だけとは言わず毎日コーヒー1杯を我慢して、毎日参拝して365回願いを叶えてもらうでしょう。

 

コーチング理論からすると、「私はゴールを達成できる人間だ」とエフィカシーを高めることが最重要ですので、「神様、叶えてください」と他力本願で願うことはないんです。神頼みするということは裏返すと、自力では達成することができない、と捉えることもできます。(実際、脳の無意識領域はそのように受け取ってしまいます。)

神様にお願いをしなくては願いが叶わないと心から思っていたとしたら、それは自分のエフィカシー(目標達成に対する自己評価)が低いということです。それでは、願い事も余計叶わなくなってしまいます。

 

初詣は、ひとつのイベントとして楽しんで、願い事は自らの力で叶えましょう。

新年の抱負とは

新年の抱負は英語で「New Year’s resolution」と表現します。新年の抱負についても、起源を遡りながら意味を考えていきます。

新年の抱負の起源

New Year’s resolution」は、Wikipediaによると、古代バビロニアの習慣で、年初に神にお返しするものの誓いを立てる、というものでした。
古代ローマでは、ヤヌス(Janus)に決意を示すことになり、中世の騎士は、クリスマスに次の年の決意(Peacock Vows:孔雀の制約)を表明していました。(出典:『Now You Know Big Book of Answers』)

つまり、元々は宗教的な神への誓いでした。

一般的な新年の抱負

マイナビニュースが男女600人にアンケートした2014年の新年の抱負ランキングは以下になります。

男性 女性
1位 お金をためる お金をためる
2位 仕事を頑張る プライベートを充実させる
3位 プライベートを充実させる 仕事をがんばる
4位 彼女を作る ダイエットする
5位 ダイエットする 結婚する

「いよいよ社会人になるので、仕事をしっかり覚えて早く一人前になりたい」
「今年はいい加減に過ごしてしまったので、もっと楽しく人生を過ごしたい」
「一人暮らしができるようになりたい」

などがありました。

 

コーチングから見る新年の抱負

新年の抱負の落とし穴

コーチングでは、脳の無意識領域に働きかけて、活性化させます。

新年の抱負のひとつの落とし穴は「今年は○○したい!」「今年◯◯を実現します!」という表現です。

セルフコーチングの方法にアファメーションがありますが、アファメーションルールに「現在形で書く」があります。すでに達成している、として記述します。これが認知科学分野でわかっている、脳の無意識領域に働きかけるコツでもあります。

「~したい」「~します」と宣言すると、「まだ○○ができていない自分」を無意識領域に認識させ、強めてしまうので、逆効果になってしまいます。そしてその「まだできていない自分」のセルフ・イメージが強くなってしまうと、そこから抜け出せずに、いつまでも叶わない…という最悪の結果にまでなってしまいます。

もうひとつの落とし穴は、現在の延長線上にあることです。

新年の抱負では1年間で叶いそうな願望を掲げることが多いので、陥りがちですが、Status Quo(ステータス・クオ)の中に収まってしまっているのです。

Status Quo(ステータス・クオ)とは、政策ディベートでも使わる用語で、現状(+現状がそのまま続いた先にある未来)を指します。政策ディベートの中では、「ある政策を導入したらどうなる(After the Plan)」と「導入しなかったらどうなる(Status Quo)」で立場を分けてディベートします。

新年の抱負が現在の延長線上にある場合、無意識領域は”何もしなくても達成できる”と思ってしまうので、「現状を変えない」というセルフ・イメージを強くしてしまいます。そうなってしまうと、せっかく決意をした新年の抱負は1年かけてももちろん達成しません。

 

また、ここまでを踏まえた、新年の抱負の重大な落とし穴として、

手頃な願望を新年の抱負にする → 叶わない → 翌年また手頃な願望を新年の抱負にする → 叶わない → 翌年また…

これを毎年続けることで、エフィカシーを下げてしまっていたら、新年の抱負は百害あって一利無しです。

だから新年の抱負は成就しない?

リチャード・ワイズマン博士が2007年に発表した結果によると、新年の抱負をした3,000人の中で一年後にそれを達成していたのは12%(360人)だったそう。世界的に見ても、新年の抱負の達成確率は低いみたいです。

 

プロのコーチが勧める新年の抱負のやり方

そこで、プロのコーチがお勧めする新年の抱負をご紹介します。

歴史的には、新年の抱負(New Year’s resolution)は神に対する誓いでしたが、現代では、新しいゴール設定の機会と捉えましょう。

新年の抱負の作り方として、一番の基本は、ここまで見てきた「落とし穴」を避けるように作っていけばいいのですが、最も効果が出やすいようにアファメーションの形式にしてみましょう。

アファメーションルールは別の記事でまとめますが、箇条書きでまとめるとこうなります。

  1. 個人的(Personal)
  2. 肯定的(Positive)
  3. 現在形(Present tense)
  4. 達成を示す(Show achievement)
  5. 比較をしない(No comparison)
  6. 動作を表す言葉(Action Words)
  7. 感情を表す言葉(Emotion Words)
  8. 正確さ(Accuracy)
  9. バランス(Balance)
  10. 現実的(Realistic)
  11. 人に話さない(Confidential)

そして、肝心の内容ですが、個人個人で様々な方面のゴール設定があると思います。具体的な例示はできませんので、「落とし穴」を避けるようなチェックリスト形式で要点をまとめてみます。

  • Status Quo(ステータス・クオ)の外側に飛び出すゴールである
  • 誰かに言われて決めたゴールではなく、自分が望んで決めたゴールである
  • 人に話したら笑われるくらい大きなゴールである
  • 達成期日を定められないほど大きなゴールである
  • 具体的な達成方法がわからないゴールである

これを踏まえることによって、作る意味のある新年の抱負が出来上がります。これからは、周りで新年の抱負の落とし穴にはまっている人を見かけたら、そっと助けてあげてください。

あなたのこれからの年末年始の過ごし方や感じ方の何かヒントになれば幸いです。