苫米地式コーチング認定コーチの萩原崇です。
非日常や、非常時、と聞くとどんなシチュエーションを思い浮かべるでしょうか。
通常コーチングでは、クライアントのゴール達成の手伝いをするときに、クライアントにはリラックスしてもらって、ゴールに強い臨場感を感じてもらうように働きかけていきます。
ところが非常時では、当然緊張状態が続くためになかなかリラックスすることはできず、無意識レベルでも現状のことを考えてしまいます。
さらに厄介なことに、無意識にとって非常時と感じるのは、現実に身の回りに危機が迫っているときだけでなく、映像を見ただけでも非常時だ、と無意識が認識してしまうことがあります。
そういった状況に対処するための危機心理学を紹介します。
危機心理学とは
危機心理学(Psychology of a Crisis)とは、米国CDCがずっと研究してる分野です。特に9.11テロ以降はレジリエンスなどの健康危機管理に力を入れています。
危機心理学
危機心理学は、国民国家レベルで共有されるような災害、戦争、テロリズムなどの状況下での心理学です。
国家レベルの規模で対処しなければなりませんが、たとえばマスメディアが政府の要請で報道を自粛しても、ネットなどで危機心理反応に対処しなければ大きな心理的問題が国民に起こり得ることになります。
つまり、影響がとても大きく、国家の経済全体にもネガティブなインパクトを与える可能性があります。
事実として、3.11の東日本大震災の後は直接的な災害の影響を受けなかった地域でも旅行や消費などが落ち込み、経済全体が停滞しました。2001年のアメリカ同時多発テロや2015年のISILによる日本人拘束事件など、日本国内で起こっていない事件に対しても、繰り返しニュースで報道され映像が流されると、無意識は非常時と認識してしまいます。
典型的危機心理反応
典型的危機心理反応としては、以下のような反応が出てきます。
慢性的不安などを抱えて特別な人間関係に依存します。
また、低リスク地域でもビジネスや旅行に心理的制限が働きます。3.11の震災後は、顕著に景気が悪化しました。
否認、非難、恐怖と逃避、希望喪失、無力感、パニックといった兆候が表れます。
また、代理リハーサルと呼ばれる、Armchair victimが出現します。
Armchair victimは、特に映像が影響を与えますが、文字通り肘掛け椅子に座ったまま、テレビやインターネットといったメディアを通じて生じる(距離的にも遠く離れた)間接的な被害者です。3.11の震災後も、津波被害などの映像が継続して放映されたため離れた地域でも危機心理被害者が出ました。
そして、”fight or flight”の心理状態の継続が起こります。
これは交感神経優位の心理状態で、”戦うか逃げるか”という緊張が続きます。このときは、前頭前野での思考が働かずに大脳辺縁系優位状態が継続します。
CDCの危機状況での状況開示ガイドライン(政府、メディア向け)
- 高い危機評価を先に、それが徐々に下がるように。後から危機評価が上がってはいけない。
- 危機が去っていないことを先に伝えてから、状況が良くなっている情報更新を頻繁にする。
- 結果を約束するのではなく、状況不確定性を伝え、問題解決のプロセスに対する確信を伝える。
危機心理を和らげるコミュニケーション方法
象徴的行動(キャンドルサービスなど)や、準備行動(水や乾電池の購入)を批判しない。そういった行動をすること自体が、危機心理を抑え和らげていきます。
そして、重要行動を3ステップで伝えます。
- You must do X(必ずやるべき行動)
- You should do Y(やったほうがいいこと)
- You can do Z(これができますよ)
行動を起こしていく。それにより不安が和らぎ、状況コントロール感が生まれます。
ひとりひとりができる危機における恐怖克服のルール
恐怖を感じていいのです。ただ、そのときに何らかの行動を起こし恐怖心を和らげます。人間は行動をすることで、ドーパミンやセロトニンが出て前頭前野優位な状態に戻っていきます。
内容がわからなくても、そういった情報に触れることで前頭前野優位な状態に戻っていきます。
まとめ
以上は米国CDCが発表している危機心理学(Psychology of a Crisis)がベースになります。
無意識レベルの非常時が続くと、長期的には国民全体のPTSDの発生に繋がる可能性があります。これを防ぐことが日本の健全な未来のために重要なので、プロフェッショナルコーチの役割のひとつだと強く感じています。